masaです。
「オレ心霊体験あるんだぜ( ・∀・)ドヤ」とか言いながら全然話してなかったんで語ります。
一応心霊体験だけど、全然怖くないし、むしろ自分の中で思い出すと泣ける話なんです。
怖いのが読みたい方は回れ右するか、当サイト内の別の話をどうぞ。
ある日、拾ってきた捨て猫が夢に出てきた不思議体験
今からもう15年以上前になるのかな?僕が高校1年生だった頃の話です。
忘れもしない、まだ寒さの残る春先のことでした。
その日は割と強い雨が降っていて、ひときわ寒かったのを覚えています。
出会い
当時付き合っていた彼女と、僕の家でよく過ごしていました。その日も自宅まで彼女と二人で帰る途中・・・
「なにか聞こえない?」
彼女が言いました。足を止めて、耳をすますと・・・
「・・・ーン」
傘に当たる雨音の中、微かに、でもはっきりと聞こえました。
「にぁぁー!」
猫の鳴き声でした。
1度聞こえてしまえば、よりはっきりとわかります。
彼女と二人、大急ぎで鳴き声の出所を探しました。
なんでかっていうと、その鳴き声は確実に助けを求める声だってわかる程、切実で、か細いものだったから。
・・・。
それはいとも簡単に分かりました。
帰り道の途中に、なんでもない公園があるんです。
鳴き声の主は、その公園の片隅、段ボール箱に入れられ、今にも消え入りそうな声で、体を震わせていました。ガタガタとね。
春先の冷たい雨に打たれて、凍えた体で必死に助けを求めていたのは、1匹の小さな黒猫でした。
僕の家は基本的に動物大歓迎です。田舎なので、ノラ猫とかしょっちゅう来てましたからね(笑)なので、その子を連れて帰ることに、ためらいは一切ありませんでした。
共に過ごす日々
子猫は、涙なのか鼻水なのか分からないほど、顔中をぐしょぐしょに濡らし、呼吸さえままならない状態でした。
とにかくと、体をタオルで拭き、暖め、常備してあったミルクを与えました。
・・・が、飲みません。
それもそのはず、先に助けを求める為に、残る力で精一杯声をあげていたのでしょう。
ーーーどうにか呼吸している状態。
僕と彼女の間に、「手遅れだったかもしれない」という空気が流れました。
翌朝
たまたま週末だったので、心配になった彼女は次の日の朝から僕の家に来ていました(当時、彼女はケータイを持っていなかったので、状況を伝えることが出来ませんでした)
「どうだった?」
ーーー
僕の送った視線の先には、昨日より元気になり、穏やかな寝息を立てる黒猫の姿がありました。
とはいえ、やはり重大な風邪の症状なのか、目は目やにで開かず、鼻も苦しそうに音を上げていました。
幸い、ほんの少しですがミルクを口にしてくれたのでちょっとだけ安心しました。
何日かして
元々ロクに学校は行ってなかったんで(恥)、この間は子猫につきっきりでしたね。
とはいえ、ちょっと前まで中学生だった脳みそでは、何をしたら良いのかわからず、ただ子猫の鼻水と目やにをとってやることしか出来ませんでした。
・・・
5日くらい経過した頃でしょうか?朝起きると、それまでずっと寝ていた子猫が、自力で歩いているではありませんか!
この時の嬉しさは今でも忘れません。相変わらず、目と鼻はまともに機能していない様子でしたが、自分で立ち、歩き、僅かながら鳴き声をあげるほどに回復していました。
彼女も来ていて、二人の間に安堵の空気が流れていました。
鼻水と枯れた声で、必至に鳴くその声が「むぅ~。むぅ~」と聞こえることから、そのコには「むぅ」という名前を付けました。
その日は、ふらふらしながらも、買ってきた猫じゃらしにじゃれるむぅと遊び、ミルクを飲ませ、夜は布団で一緒に眠りました。
ーー
ーーーーーむぅの元気な姿を見たのは、後にも先にもこの日だけでした。
病状悪化と、愚かな自分
その日だけを最後に、むぅが自力で立ち上がることはありませんでした。
翌日からは、ずっとこたつの中で眠っていました。
時折心配になって、こたつの中を覗くと、むぅは微かな声を出して、僕たちに答えてくれました。
もう、ミルクを飲もうともしませんでした。
そんな状態が、1週間くらい続いたと思います。
どうしてあの頃、「病院に連れて行く」という選択肢が頭になかったのでしょう。
「若かったから」「思いつかなかったから」
そんな理由で、助けられたかもしれない命を、ただ眺めていた自分を、今でも激しく後悔しています。
僕の両親は理由あってその頃はどちらも不在(っていうか親父は離婚でいない)、祖父母がいたのですが、高齢で僕が2階で何をしていたのかわかっていなかったんだと思います。
自転車で遠くの動物病院に連れて行くのもムリがあったかもしれません。
それでも、今、あの頃の自分に会ったら、思いっきりぶん殴ります。
僕はただ、むうの口に無理矢理ミルクを流し、吐きだしたそれを掃除するという愚行を繰り返すだけでした。
ーーーただ、「きっと元気になる」
それだけを祈るしかありませんでした。
大丈夫。一時は元気になったんだから。きっとまた立ち上がる。目やにも鼻水もなくなる。
きっと大丈夫・・・
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夢に出てきたむぅ。別れの朝。
その間、学校には行かずにずっとむぅの側にいました。
朝も昼も、こたつから出てこないむぅに声をかけていました。
いつしか、疲れて眠ってしまっていたようです・・・
ーーーそこは、雲の上とも、朝方の湖の畔とも思えるような、霧がかった場所でした。
その場所に、むぅはいました。
夢の中のむぅは、鼻水も出ていなくて、目もぱっちり開いていました。
僕はここまで来て、初めて、むぅが切れ長のキレイな目の持ち主であることを知りました。
そのキレイな瞳で、僕を見つめていました。
「むぅ!どうした!元気になったんか!もう目痛くないのか?」
夢の中とも思えない程、空気も、自身の声も、リアルでした。
むぅに近づこうとするのですが、なぜか足が前に出ません。足下に視線を移そうとしても、むぅから目線を離すことができません。
ーーー「ありがとう」
声だったのか、頭に流れてきたのか、今となってはなんとなくしか覚えていないです。
言葉というよりは、感情が流れてきたような、そんな感覚。
自分の中に、自分のものじゃない感情が流れ込んできたような、そんな感触。
夢の中で、それを悟ったんだと思います。
「やだ」
「行かないでくれよ」
そんな感情が胸の中に沸き立ってきました。
突然、むぅの背後が、眩しく光りました。
神々しいような、山の後ろから射す朝日のような、そんな光でした。
「行かないでよ!!」
今度は、声になりました。
むぅは、深く、まばたきをひとつしました。
踵を返し、光の中に消えていくむぅ。
ーーーっ!!!
目が覚めたのは、いつもの自分の布団でした。
自分でも驚くほど、涙を流していました。子供の頃、何時間も泣き続けたように、目の周りが流れた涙で溢れていました。
さっきまで見ていたのは、夢です。
僕は、霊感もあまりないし、不思議なことはあまり信じないタイプです。
でも、この時は、なぜかすぐに理解しました。
飛び起きるようにめくったこたつの中で、むぅは短い生涯を終わらせていました。
後日
寝ている間から考えると、生涯の中であれほど涙を流した日はなかったと思います。
僕は、むぅの亡骸を裏の山の、1番見晴らしのよい、桜の木の下に埋めました。
ただただ、後悔の念で押しつぶされそうでした。
もっとなにか出来たんじゃないか。
助けてあげることができたんじゃないか。
いつも開かない目で、僕に話しかけてくれていたむぅ。
僕はとうとう、むぅの目に世界を見せてあげることができなかった。
むぅを埋める間、涙が止まることはありませんでした。
むぅを埋めて、長い間その場所にいました。
話は変わりますが、当時、じいちゃんがすでにボケていました。
裏山から戻ってきた僕に、じいちゃんが言ったんです。
「あの猫は、幸せだったんだってよ。今朝、オレに言いに来たぞ。〇〇に伝えてくれって。きっと、伝えてくれって」
ーーー?
じいちゃんがむぅについて話したのは、後にも先にもその時だけでした。
正直、驚きはしましたけど、朝からの一連のことを考えると、そこまででもありませんでした。
それから、高校生の間は、命日になると彼女と一緒にむぅの墓参りをしました(途中で別れちゃったけど)
考えてみれば、むぅを出会ってから別れるまで、わずか半月ほどの事だったんですよね。
それなのに、15年以上たった今でも、なぜか強烈に思い出す時があります。
むぅに別れを告げたあの場所は、今も春になるとキレイな桜の花を咲かせています。